漢方と歴史


漢方には如何なる歴史があるのでしょうか。
漢方は東洋医学の一つです。
東洋医学とはアジア諸地域で発祥した医学の総称で、漢方の他に中医学、イスラム医学、チベット医学などが含まれます。
日本では東洋医学というと一般的に漢方を指し示すことが多く、他にも鍼、灸、按摩、マッサージなどが大きく知られています
漢方のもとである中医学は、今から約2000年以上前、「漢」の時代に中国で確立しました。
5世紀半ばころまでに中国から直接、あるいは朝鮮半島を通して日本へ伝わったと考えられています。
日本ではオランダから伝わった西洋医学を「蘭学」と呼び、これと区別するために「漢方」と呼びました。
漢方は日本に伝わった後、平安時代の後期から日本独自の診断や処方が付け加えられ、日本独自の医療、漢方薬として発展しました。
そうして江戸時代には全盛期を迎えています。
ただし明治以降、鎖国によって西洋の文化が伝来するとともにじりじり衰退し、漢方薬に代わって西洋医学が主流となっていきました。
また西洋医学の試験の合格者のみ医師の免状が得られるという国の制度によって、長い歴史を持つ漢方は完全に西洋医学にとって代ることになりました。
ただし漢方が衰退する中けれども漢方を支持する医師は根強く存在し、絶滅には至りませんでした。
そうして最近になりもう一度漢方の良さが見直されています。
統合医療の重要性が認めら中、医療の現場でも積極的に取り入れられ、医学部のカリキュラムにあるなど、どしどし期待が高まっています。

漢方と生薬


漢方まずは漢方薬という呑み薬を処方する医療を行いますが、漢方薬のもととなるのが生薬です。
生薬は自然の中に存在し、何かしらの薬効成分を含んでいるもので、植ものの葉や茎、実、根、花、樹皮などがよく利用されています。
また植もの以外にもカルシウムやナトリウムを豊富に含む鉱石や動ものの化石、角や甲ら、皮、骨、貝殻なども利用されています。
これらの生薬を干して乾燥させた後、細く砕いたり曳いたりし、それらを配合することによって漢方薬になります。
本来、漢方薬を飲み込む時折煎じて薬液にしますが、この方法は大変手間がかかります。
そこで現代では煎じた薬液から薬効成分を抽出して凍結乾燥し、これを錠剤や顆粒に加工して、保存や携帯に便利な形状にされたものが有名になっています。
漢方薬は原則として2種類以上の生薬が配合されています。
実際にはほとんどの漢方薬で4種類以上の生薬が配合されています。
この複数の生薬の組合せによる複合効果こそが他の医学には乏しい漢方薬の特長であると言えます。
また一人ひとりの体質や病状によって生薬の配合を調整できるという面で、優しい治療が期待できるでしょう。
どの生薬を組み合わせるといかなる効果が得られるか、また配合の分量や副作用はどうにかということは、長い漢方の歴史の中で、数多くの経験と研究によって体系化されています。
皆間の実際の経験によって、安全で有効な生薬と配合だけが現在に残されているのです。

漢方と未病


漢方の考え方の一つに「未病」というものがあります。
未病とは病気と健康の間、病気の一歩手前の状態であり、西洋医学による検査結果では異常は認められないが、病気になりかかっているような完全に健康とはいえないときのことをいいます。
未病は多くの場合、頭痛、肩こり、耳鳴り、疲弊、朝起きられないなどの自覚症状があります。
また健康診断で異常がみつかったが、本人には自覚症状がない場合、例えば暮らし病なども未病ととらえられるようになっています。
西洋医学では症状より検査結果が重視される偏重があり、極端に言えば病気か否かによって治療の必要の有無が決定されます。
一方漢方それでは未病も治療の対象であり、漢方薬が処方されます。
身体の不調をほうっておくと、不調の原因が身体の中で密かに病気へと進行していきます。
まず本格的な病気にかかってしまうと、健康を取り戻すのに時間も労力も要します。
そこで未病の段階で早めに対処をし、体質を改善することによって、重篤な病気へ進行するのを防ぎ、健康な身体を一少なく取り返すことが大切なのです。
現代の30代から50代の男女に未病について調査してみると、男女ともに8割以上の人が未病の状態であることが分かっています。
ただし現代のみんなは身体の不調を自覚していながら、適切な対処を通していないのが現実です。
現在、西洋医学の視点でも予防医学が重視されています。
漢方における未病の考え方は予防医学の原点とされ、今後の医療においても注目を集めています。